岩登り机上第一回・オリエンテーション


5月をもって、都岳連の雪山教室はめでたく修了。
6月から開講される岩登り教室と沢登り教室、どちらに参加すべきか? 自然と触れあう楽しさ、夏の涼をとる意味でも、沢登り教室に興味が湧いてはいるが、自分がまず習得すべき基本技術を考えれば、優先順位は当然、岩登りだ。
会場は、雪山教室のときと同じ、小田急線の参宮橋から歩いて10分ほどにある、代々木オリンピックセンターだ。集まった人数は30数名くらい。雪山教室で一緒に学んだメンバーも、7名くらいいる感じだ。男女比は、雪山教室とは違って、男性の比率がかなり高い。

岩登り教室の概要

一回目の机上講習は、岩登りの心構えと必要な装備が説明され、参加費無料。内容を聞いて、次回以降に参加すべきかどうか判断すれば良い。
この岩登り教室は、岩登りの初心者を対象にし、楽しく安全に登るために必要な基礎技術の習得を目的にしている。すでに十分な岩登りを経験していてレベルアップを目指すような人は、対象ではないという。
修了して得られるスキルの最低ラインは、夏の一般縦走路で岩稜帯などの難所を安全に越えられることだ。具体的には、剱のタテバイや奥穂〜ジャンダルムなどのルートになる。
もちろん、努力次第で本格的なアルパインライミングの世界にも踏み込むことはできるが、この半年間の講習を受けただけで一人前のクライマーになるのは、無理とのことである。
半年間の受講料は75,000円で、6月9日までに一括金額を指定口座に振り込む。実技で現地へ行く交通費や現地での宿泊・食費なども、別途必要。もちろん、持っていない個人装備は各自、購入して揃えなければならない。すべて合わせると、たぶん、15万円以上は覚悟しなければならないだろう。

全体スケジュール

毎月、1回の机上講習と1回の実技講習で、6か月間のカリキュラムが組まれている。机上講習の会場は、各回ともに代々木オリンピックセンターだ。
6月の机上講習では、ロープワークを中心に、岩登りの用語や基本技術を学ぶ。実技講習は、三ツ峠の屏風岩に行き、三点支持などの基本動作を学ぶ。交通費は往復5,000〜6,000円、宿泊費(三ツ峠・四季楽園)が朝夕食付で8,000円程度。昼食も別途必要。もしも雨天の場合は、四季楽園の室内に設けられたボードを使ってのインドアクライミングになり、その使用料として500円程度かかる。
7月は、丹沢山岳スポーツセンターで、机上講習と実技講習がまとめて実施される。確保論、搬出法、ボードクライミング体験、懸垂下降などを学ぶ。確保では、人間の重さに見立てた車両タイヤを落下させ、ロープで止める訓練を行うそうだ。現地の施設使用料は、7,000〜8,000円程度。
8月の机上講習は、救急法1として、遭難事例や三角巾の使い方を学ぶ。三角巾は、山岳地に限らず日常生活でも役立てるスキルだ。実技講習は、奥秩父の小川山に行き、スラブ・フェイスのクライミングを体験する。都内からは遠いので、前日(金曜日)夜10時に新宿からバスで出発し、午前1時頃、宿(岩根山荘)に着いて仮眠をとる。交通費は参加人数の多少で変わってくるが、宿泊費と合わせて、昨年実績は23,000円。
9月の講習は、マルチピッチ(連続登攀)に必要な事柄を学ぶ。マルチピッチとは、ロープの長さを超えるルートを登る際に、ロープが届く単位で区切って(ピッチを切ると言う)、確保と回収を繰り返しながら登っていく手法だ。先頭で登る側をリード、後続して登る側をフォローと呼ぶが、この講習会では、講師がリードを担い、受講生はフォローになる。実技は、奥多摩・五日市のつづら岩へ行く。近くに宿はないので、キャンプ施設のバンガローを借り、食事は自炊を予定する。
10月の机上講習は、救急法2として、テーピングについて学ぶ。三角巾と同様、これも日常生活にも役立てるスキルだ。実技は、6月にも行った三ツ峠の屏風岩で、200メートルほどのルートを3〜4ピッチほどのマルチピッチで、登攀と懸垂下降を練習する。200メートルという数字だけではピンと来ないが、東京タワーの高さが333メートルあることを思えば、なかなかすごい体験になりそうだ。この回が、半年間に渡る講習の中で一番の核心的内容になるという。
11月の講習は、トップロープセットについて学ぶ。自分たちだけで練習できるようになるための方法を会得する。トップロープというのは、登る岩のサイドや裏側にある道から岩の上に行き、そこからあらかじめロープを垂らしてセットする手法だ。こうすることで、十分なリード技術を持たない人だけでも、安全に確保する形で登攀を練習することができる。実技は、神奈川県・湯河原にある幕岩に行く。岩の高さは10〜15メートルほどだという。この回が、半年に渡る講習会の最終だ。
それぞれの実技講習は、降雨のないことが条件になる。雨天時は、岩が滑ることで事故につながる恐れがあるため、室内での講習に変更となる。三ツ峠と小川山については、山荘内にあるインドアのクライミングボードを利用する。丹沢山岳スポーツセンターは、ボード施設が屋外にあるため利用できず、ロープワーク主体の実技講習になる。つづら岩、幕岩も、近くにインドア施設がないため、同様だ。
すべての講習の6割以上に出席すると、修了証が授与される。なお、土日曜・二日間の実技講習の場合、土曜日のみ休んで日曜日のみに出るような対応は、丹沢山岳スポーツセンター以外については、許されない。山岳現地での単独合流は、道迷いなどのトラブルを招く恐れがあるためだ。

必要な装備


このホワイトボードに記載されたものが、各個人で用意しなければならない装備品だ。自分のように2010年度の雪山教室に出席している者は、ハーネス、環付カラビナ、120cmスリング、フリクションノット用ロープは、そのまま同じものが使える。

ハーネスは、クライミング用のレッグループタイプで、レッグ部分の寸法調整が利くものを推奨されている。おむつタイプのような簡易ハーネスは使えない。
環付カラビナ2枚は、ナス(HMS)型が推奨だが、オーバル型でも良い。ゲート部分は、オートロック型、スクリュー型、どちらでも良い。大きいほうが使いやすいが、自分の片手だけで開閉操作できることが条件。オートロック型の場合、二段階ロックのものは、操作が煩雑になるため避けるほうが良い。
普通のカラビナ2枚は、変形D型を用意する。ゲート部分はワイヤ式、ベント式、どちらでも良いが、ワイヤ式のほうがカラビナに衝撃を受けた瞬間のゲートオープンが起こりにくいという。カラビナに記載されている22〜24KNという強度は、ゲートが閉じている場合に限った値であり、瞬間的でもゲートが開いてしまうと、強度は半分以下に落ちてしまう。そのとき運悪く墜落荷重がかかると、カラビナが破断し死傷事故につながる。
スリングは、120cmを1本と60cmを2本、ソウスリングを用意する。廉価なナイロン、細く軽量なダイニーマ、どちらでも良い。
フリクションノット用ロープは、7mm径×150cm長のものを2本用意する。しなやかな素材のものが望ましく、エーデルワイス社のプルージックロープなどが推奨品。

確保器は、ATCガイド、ルベルソキューブ、どちらでも良いが、穴が二つあるタイプを用意する。グリグリのようにひとつ穴のタイプは、この講習では使えない。カラビナとの形状的な組み合わせで相性を持つ場合があるので、注意すること。なお、確保器は懸垂下降などにも使えるため、エイト環などの下降器は必要ない。
ヘルメットは、クライミング用として登山用品店で販売されているものを推奨。工事作業用でも使えなくはないが、クライミング用は軽量化されていて快適性に優れている。必ず、自分の頭に合うサイズのものを用意すること。
ライミングシューズは、甲の絞めがマジックテープ、紐編み、スリッパタイプなど、いろいろあるが、自分の足に合う物であればタイプは問わない。登山靴でも登れなくはないが、やはりクライミング専用のもののほうが登りやすい。一般的には、足にきついくらいのサイズを選ぶが、初心者の場合、最初からあまりきついサイズを選ぶと苦労する。少なくとも2〜3分以上は履いていて苦しくならないものが良い。価格は、2万円以下のものが多い。
革製手袋は、確保に用いるもので、指のすべて包まれるフルグローブが必要。登山用品店で専用のものを買うと7,000円ほどするが、ホームセンターで一般作業用のものを買えば1,000円以下で済む。木綿の軍手は使えない。
雨具とヘッドランプは、普通の登山用のもので良い。服装は、上は、襟付きのラガーシャツのようなものが良いが、Tシャツでも可。下は、長ズボン。
ザックは、個人装備品のほか、ロープなどの共同装備品も入れられるよう、30リットルくらいの容量が必要。肩掛けが紐のようなナップサックはダメ。

そのほか、必須ではないがチョークバッグがあると良い。手汗の多い人は、特に推奨。
6月の三ツ峠などは、ブヨに刺されやすいため、あらかじめ虫除けスプレーを顔などに塗っておくこと。髪の生え際と額との境目などが特に刺されやすい。また、日焼け止めも必要。サングラスはなくても良い。ふだん眼鏡の人は、コンタクトレンズに変えると顔面を岩に擦るような姿勢でも動きやすいが、今回の講習ではそこまでの内容は求めない。

参加申込みと保険加入

講習会の参加条件として、山岳登攀に対応した遭難対策保険への加入が義務付けられている。jRO(日本山岳救助機構)と日山協(日本山岳協会)のものが推奨だが、モンベルの山岳保険などでも可。今回、初回の実技講習が6月25日に予定されているので、新たに保険の契約を結ぶ場合は、その日までに間に合うよう急ぐ必要がある。
入会申込書は、6月7日(火)までに事務局宛てFAXなどで送付する。受講料の振込書の通信欄には「11岩登り教室」と記載しておく。6月9日(木)の第二回机上講習には、振込書の控えを持参すること。