日の出待ち

鏡池で夜明けを待つ。狙いは日の出だが、日の出前にゆっくり変化していく空の色合いと山並みのシルエットも、素晴らしくフォトジェニックな存在だと思う。場所を少しずつ移動しながら、日の出の位置推定と山並みがきれいに水面へ映る場所を見つけ出す。
4時半頃になると、人が増えてきた。後から来たおばちゃんが私に、その場所良いよねぇ?と問いかけると、先に陣取っていた例の三脚の持ち主が、早い者勝ちだよ、深夜から先に来てるんだからね、と笑って返事を代行してくださった。
5時半頃には、あたりはすっかり明るくなり、西側の弓折岳は朝日を浴びて輝いている。しかし、朝日は東側の高い尾根に隠れているのか、まだ見えない。しびれを切らしたのか、多くの人が小屋へ戻っていく。
5時54分、稜線の一点が強く輝き、ようやく太陽が姿を現した。タイミングはしっかり押さえたが、太陽はすでに深紅の光を失っていた。やはり、日の出を狙うべき場所は山頂なのだ。
早朝の撮影は一段落したので、小屋に戻って朝食をいただく。6時前に発つ人が多かったのか、食堂は空いていた。メニューは、焼き魚、炒り卵、筍の煮付などが並び、朝食としては豪華なほうかも知れない。しかし何より、ご飯と味噌汁の美味しいのは嬉しい。
食事を終え、出発に備えてザックを整理していると、小屋の受付のおやじさんが泊まり客一人一人に丁寧なお詫びをされていた。混んで窮屈な思いをさせ申し訳ない、懲りずにまたぜひ来てください、という感じの内容ではあるが、一般的にはぶっきらぼうな方が多い山小屋スタッフでは珍しく、実に心温まるシーンだった。