星のシルエット

鏡池に映る夜明け前の槍ヶ岳

深夜1時。ふと、目が醒めたので、トイレに立つ。何やら聞き覚えのある、すごい大きないびきが辺りに響いているし、部屋も人多過ぎで酸素不足のような息苦しさだ。ひんやりした空気を吸いたくなったので、外へ出てみる。
すごい…、満天の星空。あまりに星が多くて、ぱっと見では星座の区別が付かない。天の川もとっても大きい。そして流れ星が、ひとつ、ふたつ、みっつ…、次々と現れる。後で知ったのだが、この時期はペルセウス座流星群が最も良い頃だったらしい。
小屋前のテラスに人は居なかったが、月明かりのない暗闇に目が慣れてくるにしたがい、カメラの三脚が立っているのに気付いた。カメラのレンズが狙っている先には、槍ヶ岳のシルエットがあった。そうか…! 急いで室内に戻る。
音を立てないよう注意しながら、自分のザックにくくりつけていた三脚を外し、枕元に置いていたカメラバッグを持って、再び外に出た。カメラを最高感度にセットし、何枚か撮って調子を確認。良さそうな具合をつかめたところで、長時間露光を試みた。レリーズを押して、10分弱…。
槍ヶ岳山荘の明かりが二つ眼のように光り、手前に鏡平の樹木が入る。主題たる槍ヶ岳は脇役みたいだが、お気に入りの1枚になった。

何枚か撮っているうち、先発で立てられていた三脚の持ち主が現れた。ヒソヒソ声で挨拶を交わし、広角で2時間開けなど、撮影条件などをお聞きする。しばらくすると、その方のグループの仲間の方が現れ、連れだって鏡池の方へ向かわれた。
私はその場に残り、引き続き、写真を撮る。槍ヶ岳の後ろにはオリオン座が上がり、空が少しずつ白み出す。それにつれ、星が減っていく…。時計を見ると、もう3時半を過ぎている。あと1時間もすれば、明け方の領域であるので、鏡池へ移動することにした。