日暮れの水辺

夕食の時刻となり、食堂へ降りる。周りを見渡すと、多くの宿泊客に混じって、あの蛭子さんを発見。特に面識があるわけでもないので、挨拶はしなかったが、目立つ風貌はお互い様か。夕食メニューはメンチカツ、焼売、揚げ春巻など、保存食材っぽい惣菜中心ではあるが、小うどんまで付いて、ボリューム感は文句なし。何より、ご飯と味噌汁がとっても旨い。山荘オーナーである小池潜さんの著書によれば、上宝で農家を営む兄の田で作られたコシヒカリで、稲ばさに架け天日干しした自慢のお米とのこと、不味いはずもないのだが。
食事を終え、夕暮れは近付くが、相変わらず雲は厚く、写真撮りには冴えない空が広がっている。チャンスを信じ、カメラを持って再び鏡池のほとりへ行ってみることにした。案の定、冴えない空を見ながら退屈そうにカメラを携える人が数名いる。こういう場面に加わると、お決まりのパターン、写真談義に花が咲く。
夕暮れ時の池の畔というのは、物語の世界なら実に素敵な場所だが、現実は不快な場所である。小さな虫が飛び回って目や鼻に飛び込んでくるかと思えば、血に飢えた蚊も容赦なく顔や手に食いついてくる。一応、フマキラーの腕時計型蚊取り器は持って行ったのだが、効き目は気休め程度しかないようで、頬など数か所食われてしまった。
日没直後のほんの一瞬、雲の切れ間が現れ、穂高の峰が顔を出した。ここからよく見えるよ、とのおばちゃんのアドバイスに感謝し、急いで移動してカメラのシャッターを切る。

夕暮れの映えた水面が撮影できると、やはり嬉しいものである。