残雪の燕岳・大天井岳 3日目

冬期小屋で目覚めたのは、早朝3時半頃。すでに目覚めた人が多いようだ。水筒のお湯で喉をうるおした後、用を足すため外に出てみた。曇り空が間近に迫るほど低く、安曇野の街明かりを反射して怖いほど空が明るい。もし、この雲がもうちょっと降りてくると、ガスって視界が効かなくなるだろう。よく観察すると、西側は雲が高く、東側は雲が低い。風の流れは西から東なので、恐らく、雲は上がるのではないか? といっても、雲が切れる見込みはなさそうだし、天気予報でも今日は1日ずっと曇天だ。今日は写真よりも縦走優先で行こう。
昨日の疲れが大きかったためか、あまり空腹は感じない。朝食はコーヒーとシリアルバーで簡単に済ませた。パッキングを済ませ、5時には全員、小屋の外へ出た。挨拶の後、自分以外の5人は常念への縦走路へ出発した。皆さん、無事に楽しく頑張って!

ダメモトで、大天井岳の山頂で少しばかり粘り、写真を撮ってみた。寒々とした写りだが、まあ、これだって今来てなければ撮れない瞬間だ。

山頂からの下降は、夏場は使えない直登ルート、高度感があってスリリングだ。途中、岩に埋め込まれた慰霊碑があった。昭和42年にここで遭難された金沢大学山岳部員3名の方の名前が刻まれている。夏場の登山道では決して通らない場所だ。
魔のトラバースは、予想通り締まった雪で無難に通過。レリーフ前後のクサリハシゴも同じく問題なし。

切通岩を越えたところで、ふっと緊張がほぐれ、無性に空腹感がわき起こった。時間もたっぷりあるので、ここできちんと朝食を摂ることにした。タマネギをまな板に乗せてナイフで刻み、ツナと一緒に煮込む。通りすがりの人が「いい匂い、美味しそうですね」と言ってくれたのは、ちょっと嬉しい。棒ラーメンを入れ、ちょっと煮込んで海苔とすりゴマを乗せ、出来上がり。このタイミングと場所で食べるラーメンは、最高に美味しかった。
食事を終え、行動再開。為右衛門吊岩近くまで来たところで、粉雪がちらつき出した。風はさほど強くないし、ケータイで見る雨雲レーダーからも、この先しばらく問題はないと判断する。1時間ほどで雪は止み、再び穏やかな曇天に戻った。

雪庇の稜線は、低い気温が幸いし、前日より締まって歩きやすかった。大下りの頭から先はアイゼンを外し、ビブラムソールで十分いけた。

最後の難関は蛙岩のトンネル。ザックを先に踊り場に落とし、ノーアイゼンで滑り台のようにカラダも突入成功。踊り場でザックを背負い、ピッケルワークに頼りつつ、慎重にトンネルを下降。意外と簡単、無事に脱出。

燕山荘に辿り付いてみると、テン場は前日と違ってガラ空き。連休前半の最終日だから当然とは言え、こうも違うものなのか。立派な風防ブロックに囲まれたエリアを確保し、テント設営。夕食は、再びトマトリゾット風おじや。そろそろ飽きてきた。
天候は夕方までずっと曇天で変化なし。写真撮影の楽しみは、明日朝に賭けよう。