アルプスシンフォニー

テントに戻り、熱い紅茶を入れ、カラダを暖める。少し早いが朝食を支度し、あまり空いていないお腹に詰め込む。
午前3時半。まだ月明かりが支配する闇の中、カメラを持って常念岳へ登頂。尖った風が耳を切り、びゅうびゅうと音を立てる。
やがて、東の地平線の果てが茜色に焼け始めた。空に浮かぶ雲は風で千切れ千切れ、激しく形を変える。荒天の後は最高のシャッターチャンスと言われているが、今まさに実感するシーンが始まろうとしている。
尾根、雲海、月、山脈、独標、…。さまざまな景色のパーツひとつひとつが、太陽をコンダクターに、怒濤の協和音を奏でるオーケストラ奏者のようだ。
1日見送って、本当に良かった。


撮影を終え、大天井荘で水をいただき、マネージャーにご挨拶。「良かったですね」「ええ、ありがとうございました」。多くの言葉は要らなかった。