雲の上の縦走路

7時半、撤収を終え、いよいよ出発。ハイウェイとも揶揄される、爽快な縦走路の始まりである。登山は辛く嫌い、という人も、この雲の上の縦走路に立ったら、きっと考えを改めるのではないだろうか。遥か彼方まで広がる雲海と、槍・穂高を始めとする最上級の山岳パノラマを両脇に携え、緩やかな尾根道が彼方まで伸びているのだ。
爽快なハイマツの海を抜けると、ほどなく岩峰に辿り着く。蛙岩(げえろいわ)と呼ばれるチェックポイントだ。ザックを降ろし、10分ほど休憩。
岩礁地帯をしばらく歩くと、大きな黒い岩峰が見えてきた。為右衛門吊岩である。ここでも10分ほど休憩。

岩峰を抜けて花崗岩の荒れ地に出ると、見事なコマクサの群落に出会った。大地がピンクに染まったかのよう。
しばらく歩くと、見上げるような大天井岳の取付きに出た。初級レベルの登り口ではあるが、ハシゴがそびえ、なかなか迫力がある。

靴紐を締め直し、ザックベルトを確認。ゆっくりペースで慎重に登り出す。岩を掴みながら、急斜面をジグザグに進む。ときどきマーキングされたルートを見失いそうになるが、道を空けて小休止していれば追い越して行く人がいるので、お手本に眺めれば良い。自分だけの視点で一生懸命になり過ぎて周りを見えなくなる状態が、一番危ないと思う。
てっぺんまであともう少しと思ったあたりで、左へ抜ける巻き道に出る。ぐるりと廻ると、目指す大天井荘が見え、発動機の音も聞こえてきた。一安心。