初冬の双六を偵察

11月初めの三連休は、東京から新穂高行きの夜行バス・毎日アルペン号で行ける今年最後のチャンスだ。2泊3日で双六岳周辺へ行ってみようと思う。周辺の山小屋はすべて閉まった後なので、降雪前提のテント泊だ。

初日は一気に双六まで行かず、鏡平から少し上、弓折中段から少し下にある踊り場付近でのビバークも想定する。ここならスマホで最新の気象情報も確認でき好都合だ。もしも雪がまったくない場合は、飲み水は秩父小沢あたりで4リットルほど汲んで担ぐことになるだろう。鏡平付近の沢から採る手もあるが、植生保護を考えると迂闊に歩き回るのは控えるべきだ。もしも池に氷が張っていれば、溶かして飲み水にできるだろう。双六での飲み水は、三俣へ向かう巻道から少し下ったあたりで採ろうと思う。双六のキャンプ地から水汲みに往復すると1時間くらい要する感じだ。双六池に氷が張ってくれればありがたいが、(自分も含めた)夏のテン泊者の汗と汚れが混じってそうで、あまり使いたくない水だ。
装備は、12本爪アイゼンとピッケルを持つが、左俣林道や小池新道をプラブーツで歩くのはまだ辛い気もする。
天候は、移動性高気圧から次の移動性高気圧へとバトンタッチする気圧の谷間に当たり、日曜日は前線が通過するため、ある程度の崩れを覚悟しなければならない。写真撮影シーンは月曜日の朝歩く稜線以外はあまり期待できず、今回は偵察とスキルアップができればそれで良しとする。

小糸焼窯元から見た「飛騨の里通り」の風景とリアルタイム気温、湿度データ
http://koitoyaki.com/livecam/

飛騨高山の小糸焼さんで公開されている気温記録を見ると、最低気温は今週初めに晴天の放射冷却で5℃くらいまで下がり、その後は7〜8℃くらいで推移している。天気予報からみても、7℃くらいが飛騨高山におけるこの三連休時期の最低気温と考えて良いだろう。小糸焼さんの観測地は標高600m付近にあるため、100mにつき-0.6℃の逓減率で予測すると、標高1400m付近のワサビ平での気温差は-5℃、標高2300m付近の鏡平は-10℃、標高2600m付近の弓折稜線や双六キャンプ地付近なら-12℃の気温差を見込めば良い。そこから想定する双六キャンプ地付近の最低気温は-5℃だ。これならスリーシーズンシュラフに防寒着を着込んで対応できるだろうし、靴もプラブーツまでは要らないだろう。もしも日曜日の天候状況が悪化し双六でのテント泊が厳しい場合は、弓折尾根で停滞するか双六の冬期小屋を使う。

ちょうど今、書店に並んでいる月刊「岳人」2013年11月号に、この時期の雲ノ平山行の体験記が掲載されている。プロ写真家の西田省三さんが書かれた記事で、新穂高から入山して鏡平、双六、三俣を経由して雲ノ平まで歩く際の注意点がまとめられており、とても参考になる。年によって雪がまったくないときもあれば、ラッセルを強いられるときもあり、雨に遭うこともある。鏡平付近は沢や水溜まりをうっかり踏み抜かないよう注意が要る。この時期に靴を濡らしてしまうと、敗退せざるを得ない。弓折から双六の稜線では、雪が吹き溜まるとラッセルに苦労するなど。
岳人誌の記事中で紹介されているルート図は、夏道とほぼ同じだ。シシウドガ原から鏡平は夏のトラバース道を辿る。鏡平から弓折乗越は、夏のトラバース道ではなく尾根直登のようにも見えるが、作図の都合で実際はトラバース道かも知れない。双六から三俣は稜線ルートを採る。三俣から雲ノ平は源流域から日本庭園を経由する夏ルート通りだ。1日目で新穂高→双六、2日目で双六→雲ノ平、3日目で雲ノ平→双六、4日目で双六→新穂高という3泊4日の行程になっているが、紹介されている参考タイムは夏とほぼ同じものなので、無雪に近いケースだろう。記事文中では、弓折から双六まで猛ラッセルになると夏のタイムの3倍かかったとの話も出ている。
今回の山行を経れば、双六周辺でシーズンひととおりの様子を知ることになる。今年の5月と6月に行った感覚とは違うものがあるだろうし、楽しみだ。