新雪の燕岳を存分に楽しむ

11月22日〜25日、3泊4日の燕岳山行を終え、無事に下山した。

初日

予定されていた日本山岳写真協会 松本支部主催の撮影会は、11月23日が悪天のため残念ながら中止になった。前日の11月22日が好天のため、予定していた有明荘への宿泊はキャンセルし、この日のうちに燕山荘まで登ることにした。有明荘は通常、直前のキャンセルにはキャンセル料を要するのだが、もてなしの食材が尽きた事情の食事メニュー(カレー)が予定されていたため、今回特別にキャンセル料は不要とのこと。

11月22日の正午に中房登山口から登り始め、合戦小屋には15時半頃に到着した。合戦小屋は営業しておらず、誰も居ない。冬至が近いこの時期は16時半頃には日没となるため、本来は14時までには合戦小屋まで来ているべきだ。携帯電話で燕山荘に遅れて到着することをお詫びした後、ここまで来た安心感からか、座って一休みするうちにふっと眠りこけてしまい、寒さに気付いて起きたらすでに30分ほど経過。まずいと焦りつつ、合戦小屋を出発。森林限界を越えた合戦尾根の雪面状態はほどよく締まって歩きやすかった。気温は低いが風はほとんどない。燕山荘直下の登りは、すでに冬期の直登ルートに変わっていた。17時頃、日没時刻を過ぎたがライトは要らない明るさで燕山荘へ到着。18時に夕食。この日の宿泊者は30名居なかったと思う。

2日目


この日は、夜明け前から昼まで吹雪いていた。燕山荘の窓には霜がびっしり付いて寒かった。正午頃で吹雪は止んだが、厚い雲に包まれたのか視界範囲は30メートル程度のホワイトアウト状態、外に出ても仕方ないので、燕山荘の書棚前で1日過ごす。それでも、午後には登ってらっしゃる方々が居て、結局、宿泊者は前日の倍以上に増えたようだ。この日に登られた方の話によると、視界は利かないが無風で意外に暖かく着込んでいると暑いほどだったらしい。日没直後に一瞬ガスが切れ、槍の穂先が見えた。撮影の本命は3日目以降と思って夕食後に自分はすぐ就寝したが、夜景の展望は良かったとの話を後で聞いて、ちょっと残念だった。

3日目


この日の朝は前日の午後と同様、ホワイトアウト状態。天気予報では午後から回復することになっていたので、しばし待機。予想より早く8時半頃にガスが切れ、白銀の大展望が現れた。急いで行動支度を整え、9時頃、外に出た。辺りの岩や木々には霧氷がびっしり。ウキウキしながら、大天井岳に向かう南の稜線を歩き始めた。

水平でゆるやかな部分になると深雪の吹き溜まりがあったりで、ワカンを付けて歩いた。西高東低の冬型気圧配置で強風を覚悟したが、風は意外と緩く、優しい日差しとともに小春日和的な快適さだった。

先行して歩かれる方々がいらっしゃたため、ラッセルを強いられる苦労はなかったが、蛙岩手前のガレ場は夏道を辿れず、かと言ってガレ場のリッジを進むと大岩の深い隙間に雪が被って危険な落とし穴だらけ。できれば大下りの頭まで行きたかったのだが、お昼には燕山荘に戻って昼食を摂りたいこともあり、蛙岩手前で引き返すことにした。

燕山荘に戻ってみると、たった3時間ほどしか経っていないのに、白銀の風景は拭われたように消えて岩や土の地色が現れていた。美しい霧氷の命は儚く短い。いずれガスが晴れると分かっているときは、晴れる前に先回りし撮影スポットで待機すべきことを改めて強く感じた。

食事を済ませて一休みした後、午後は燕岳の山頂近くまで歩いてみた。昼を過ぎると北アルプス主稜方向が逆光になり、高くからの日差しでは奇岩の起伏も冴えない表情になってしまう。その場の撮影としてはあまり得るものがなかったが、翌日の午前に備えてのロケハン的には良かったと思う。

日没の深紅を期待したが、残念ながら西の地平線を雲が覆って染まり具合はいまひとつ。
夕食は多くの人たちで賑わった。この日に入山した友人や友人の友人たち、そして山岳写真関係の皆さんと夜遅くまで楽しく語らいの時を過ごした。

深夜になってから、月明かりでの撮影にトライしてみた。この日の月齢は10。満月の7割ほどになるため、かなり明るい。上記の写真は、F4.5・ISO800で30秒露光しRAW現像で1段増感したものだが、19mm(APS-C)の広角でも星像がちょっと流れてしまった。

4日目



この日の朝は、燕山荘裏手の斜面を少し降りた場所で夜明け前から撮影待機。移動性高気圧が真上近くまで来ているため、風は穏やかで寒さもあまり感じない。東の地平線には雲ひとつなく、モルゲンロートを見るには最高のコンディションだ。


荘厳な夜明けとともに、北アルプスの主稜線が深紅に染まった。聞くところによれば、厳冬期のモルゲンロートはもっと美しいというが、それでも夏季とは次元が違う美しさ。日が昇るにつれ、深紅はオレンジから黄金色へと変化。
ひととおり撮り終えたところで、燕山荘に戻り朝食を摂った。すぐに下山するのももったいないので、燕岳の山頂を往復して撮影を楽しんだ。



9時半頃より下山。中房温泉で入浴の後、バスで帰宅。連休最終日の渋滞に閉じ込められたのは辛かったが、満足いく山旅だった。