SPACE BATTLESHIP ヤマト


実写版・宇宙戦艦ヤマトを近所のシネマコンプレックスで見てきた。何を隠そう、自分はTVアニメ・オリジナル版の宇宙戦艦ヤマトに“ほぼ”リアルタイムでハマった世代である。“ほぼ”と断るのは、1974年の初回TV放映時は、裏番組の「猿の軍団」(円谷プロ制作)を見ていたからだ。その後、平日夕方にヤマトの再放送が始まって、学校帰りに友人宅で見せられるうち、ハマってしまったパターンである。
今回の実写版は、予想に反して出来が良く、怖いモノ見たさの思いが見事に裏切られた。そもそも、アニメ版のヤマトは、実写化の困難性以前に、設定やストーリーが矛盾のカタマリと言ってよい内容だ。もしもオリジナル至上主義で実写化に突っ込んでいたら、今の時代にはムゴい作品が出来あがっていただろう。
ストーリーについては、さまざまなハリウッドSF映画マッシュアップした印象は否めないけども、複雑な連立方程式を解くかのようにオリジナルの矛盾点を巧く解決していたと思う。石津嵐・豊田有恒の小説版ほどぶっ飛んだストーリーは採れないだろうと思えば、妥当な落としどころだったのではないか。
実写化で最も心配だったのは、登場キャラクターの配役だが、これもオリジナル至上主義を捨てたおかけで、見事に成功していると思う。木村拓哉演じる古代進黒木メイサ演じる森雪、緒形直人演じる島大介など、オリジナルのキャラクターに飲まれることなく役者自身のキャラクターが光り、活き活きと見事な存在感があった。山崎努演じる沖田館長は、とぼけた独特のキャラクターが十分に発揮されていない印象を受けたが、そこは映画という2時間ほどの時間枠の制限が大きかったのだと思う。柳葉敏郎演じる真田技師長だけは、オリジナルを忠実にトレースしていたが、これはこれで見事なハマり具合で、ヤマトファンの胸を熱くするだろう役どころだった。
強いて不満点を挙げれば、VFXにもっと緻密な重量感と俯瞰する構図が欲しかったこと、回想的な部分にセリフ回しで流さずカット割を入れてほしかった点がいくつか見られたことくらいだが、恐らく、制作費に直結する部分でやむを得なかったのかも知れない。できることなら、オリジナルにあったいくつかの名シーン(乗組員の乗艦前での行進、ヤマト艦内のオリエンテーション、真田技師長のワープ航法プレゼンなど)も、実写で見たかったが…。
TVアニメ版ヤマトを見た当時、戦艦ヤマトが沈んだ昭和20年は、遙か昔の出来事だと思っていたのだが、実は29年しか経っていない。そして、TVアニメ版放映から今回の実写版放映までには、すでに36年もの年月が経っている。TVアニメ版をリアルタイムで見た世代が今回の実写版の制作に携わっているのと同じタイムスパンで、太平洋戦争をリアルタイムで体験した世代が当時のTVアニメ版制作に携わっていたことには、ちょっと複雑な思いを感じる。