ジャストシステムのIDisk Backupを試してみた

写真がずいぶん溜まってくると、保存方法にも悩むようになる。1000万画素を越えるデジタル一眼レフカメラを使い、RAWデータで撮るようになると、実にものすごい容量だ。ハードディスクは技術進歩で、2年もすれば倍くらいの容量に換えられるけども、バックアップ手段は問題だ。少し前はDVDに焼いて保存していたが、1枚4GBちょっとの容量はRAWデータには狭すぎて、実用性が低い。最近は、外付ハードディスクを2個用意して、内蔵ディスクから交互にコピーを置く方法でやっているが、けっこう手間のかかる作業である。
何か良い方法がないかといろいろ探しているうち、パソコンソフトメーカーの老舗ジャストシステムが、今年4月からバックアップ容量無制限のオンラインストレージサービスを始めているのを知った。インターネットディスクとして以前から提供していたサービスにバックアップ機能を付加したものである。正式名称は「IDisk Backup for Windowshttp://internetdisk.jp/backup/info.html といい、バックアップ専用プランなら毎月525円の負担だけで済む。加入月は無料ということもあるので、とりあえず試してみることにした。
利用方法は、シンプルな専用ツールをバックアップしたいパソコンにインストールして、オンラインでアクティベーション手続きをし、専用ツールから対象フォルダーを指定するだけでいい。10分もかからない簡単な操作で、たぶん、その前の契約約款とか読むほうが時間を費やすだろう。ツールの初期設定ままだと、エクスプローラーからフォルダーやファイルを表示する際にやたら遅くなって、実用範囲を越える操作ストレスを感じるが、これは、設定画面から「ステータスシグナルを表示する」のチェックを外せば、普通に戻るので問題ない。
安くて、使い勝手もいいし、安心感もあるシステムなのだが、対象ファイルには何かと制限があるので、人によって向き不向きははっきり分かれるだろう。自分のように、写真のファイルを保存する用途ならば何ら制限にかからないが、動画やメディアイメージなどを保存する用途では、ZIP分割処理などを要するだろう。
さて、自分には最高に向いたシステムかな?と思って使い始めてみたら、これがまた、甘いものではなかった。何より驚いたのが、バックアップ速度が致命的に遅いことだ。ツールの仕様で、小さなファイルを優先して先にバックアップするため、使い始めに速度が出ないのは仕方ないが、サイズ10MB以上のファイルを連続して転送できるようなタイミングになっても、1時間あたり200MBくらいが速度限界である。光フレッツ回線の1%も活かされない非常に残念な遅さだ。パフォーマンスモニターで見ても、ネットワーク速度はぴたっと一直線に張り付いており、日中、夜間、平日、休日に関係なく、一定値を保っている。これはベストエフォートなんて甘いものではなく、サービス提供者側が意図的に帯域制限をかけている状態と考えられる。
今どきのオンラインディスクサービスなのに、まさか、24時間費やしたとしてもDVDの1枚分しか転送できないなんて、事前に想像できなかったのは失敗か。自分のようなITに酔狂な人間はともかく、ごく普通の人向けとしても、これだけ遅いのではまずいと思う。せめて、この4倍以上のスピードは出てくれないと、実用限界以下のレベルだろう。
なお、戻し(リストア)は、意外に速い。1時間あたり3GB以上のスピードが出るのは、不幸中の幸いといったところ。ただし、ツールの処理が重いようで、リストア中はCPU使用率が100%近くなる。所要時間はパソコンの性能に大きく左右されそうだ。また、リストア操作は、全データ一括でしかできない。必要なファイルだけ選んでリストアすることは、できないのだ。その上、リストア途中に何らかの原因(例え、センター側でのシステムメンテナンスであっても)で中断してしまうと、途中再開はできない。また最初からやり直しになる。何日も費やしてリストアしている最中、回線トラブル等で瞬断したら、非常に悲しいことだろう。
そんなこんなで、今どきのハードディスク1個分のデータをバックアップしようと思ったら、パソコンを何か月も24時間連続で動かすことを強いられてしまう。その間の電気代で、簡単にハードディスクがもう1個買えてしまいそうな状況だ。これはとても人に勧められるようなものではない。バックアップの速度改善と、個別リストアや途中再開リストア機能が実装されるまでは、いくら安くても有料サービスを謳える状況にはほど遠いと感じた。